マンガの他メディア化

以前、三浦しをんのコメントだけに一言反応したこの本。

あの時には一言ではとても書けなかったので触れなかったのですが、
とても驚いたというか、「そうだったのか!」と思った箇所があって、
いつか書いておかないと!と気になっていました。


最近も「もやしもん」のドラマ化などが話題になっていますが、それです。
よしながふみ羽海野チカが、マンガのアニメ化やドラマ化について語る箇所。


この2人、初めて顔を合わせてがっつり話した日に費やした時間はなんと16時間。
最初は他の人もいたそうだけれど、二人きりになって羽海野さんが切り出した話。


「『西洋骨董洋菓子店』がドラマになった時どうでした?」


ちょうど、ハチクロがアニメになる直前だったらしい。


その時のよしながふみの回答から、私は釘付けになりました。
彼女は「西洋骨董洋菓子店」のドラマ(藤木直人とかタッキー出演)が始まる直前に
直接読者に会った際、「なんであんな事許可したんですか!」って怒られたそうです。


その時、彼女は
「ドラマが始まったら、きっとドラマの方がお好きだって言う方が
沢山いらっしゃるようになると思いますよ」
と答えたとか。


オトナです。


でも、その話の後に続く話。
そこの部分で膝を打ちました。
長いけど引用するしかないかなー。

(よしなが)
だって、その怒ってきたお客さんは、まごうことなく私のマンガを愛してるんですよ。私のマンガを間違いなく大事に思って、だからこそのお怒りなわけなんですよ。で、読者さんはメディア化になったときに、傷つくんですわ、自分の大切なものを無理矢理こじ開けられて、私と同じように思わない人たちの前にさらされる、そういう気分になるわけ。で、そういう不愉快な気分に私(原作者)も含めてさせるっていうときに、非常に商業主義的な理由しか、多分読者さんには見つからないのね、メディアになる事を原作者が許可した理由が。だからとっても傷つくんですよ。

(羽海野)
うんうん。

(よしなが)
ただ、これは、みんなマンガ家は分かる事なんだけれど、数あるマンガの中から別の畑のクリエーターの人が、自分の作品を選んでくれたという事の、この嬉しさ、っていうのがあるんです。多分誰一人として「もっと宣伝になるから」という理由じゃないのよ。メディア化を受けるっていうのは。違う畑の、自分と同じクリエーターが、いくら人気のあるマンガといっても沢山あるわけじゃないですか、その中からこの私のマンガを映像化したい!と言ってくれたっていう…。嬉しいんですよ。で、実写になって、自分のマンガのどこを気に入ってくれたかを見たいんです。

ー中略ー

(羽海野)
ね。だから、本当にメディアミックスになると言う事は、ドラマなりアニメなり、用意も含めてその人の1年くらいを、私の原作にくれるって言ってくれてるんですよ。同じクリエーターである人が「私はあなたのマンガに自分の1年間かけます」って言ってくれた事が、すごい嬉しいんですよ、やっぱり。でも、読者さんから返って来た反応は「そんなにまでして売れたいのか」というもので…すっごくびっくりして悲しくなってしまって、諦めちゃけないんだけどわかり合えないのかと、思いそうになってしまったりもして…。

(よしなが)
ー中略ー
でも読者の方々が大事に思っているのは、あくまでもそのマンガであってマンガ家ではないと思うし、それでいいと私自身は思っているんですけど。ただ、そういう風に聞いてくださったので、答えの最後に、読者さんは、それでマンガが面白くなくなってしまうんじゃないか、とか、人気が出たからといってたらたら長くなっちゃうんじゃないか、とか。そういうことを心配なさってる。だから、結局メディアになってもならなくても、マンガ家に出来る事はいつも一つで、面白いマンガをベストを尽くして描こうとすること、それだけ。だから同じでいいんです、ウミノさんは何にも変わらなくていい、今まで通り読者さんに面白いマンガを提供するという気持ちでお描きになってくれればいい、という話で終わったんだよね。

(羽海野)
うん、そのとき、よしながさんがね、「ドラマも何もみんな通り過ぎていくけれども、単行本だけが残る。だから、マンガを頑張る事」だって。「時間が経っても残るのは原作のマンガだから、そこを自分でわかっていれば大丈夫だ」って言ってくれて、あのときは嬉しかった。そうか、そうだよな、って思って。

(よしなが)
テレビは、映画もそうですけど、瞬間芸術だから、放映されると終わってっちゃう訳ですよね。でも、マンガっていうのはそこに常に紙媒体があって、手に取って開くとすぐに読めて、ずっとずっと残る。やっぱりその違いが大きい。

この後も少し続いて、「ふーん」「へー」「ほー」と思わされます。
気になる方はぜひ本をお読みくださいね。


私はこれを読み、「ああ『原作者』はこんなふうに思ってたんだ」って初めて知りました。
確かに私も、好きな漫画のアニメ化まではするっと流せる方だけれども、
ドラマ化の時は「えー、なんでー」とか文句言ってたかなあ。
まあ往々にして配役に対してだけれど。
あと、「ドラマの制作者は元ネタを漫画に頼りすぎじゃない?」とかも言ってたかな。
(どうして過去形かと言うと、ここ数年日本のドラマなどをあまり見てないからです。)


これからはちょっと違う気持ちで元ネタ漫画のドラマを受け入れられるかな??


でも、何年経っても、いくら考えても、いくら悟っても、


堂本剛の「ハムテル」はないと思う。


ていうか、「動物のお医者さん」がドラマ化されたのっていつ??
菱沼さん並みに痛感が鈍いかおりんでした。